【報告】英国の視察を終えて

青年社会活動コアリーダー育成プログラム 参加報告(スタッフ 高濱 明日香)

【概要】

青年社会活動コアリーダー育成プログラムは、高齢者・障がい者・青少年分野

で活動をしている青年8名+団長1名が先進国へ派遣され、各分野の取り組み

を視察する事業です。

 

私は平成26年度のプログラムで、障がい者分野の参加青年として選ばれました。

応募資格は年齢が23~40歳、社会活動経験が3年以上です。

メンバーは知的障がい者就労施設の所長や知的障がい者入所施設の職員、病院

の理学療法士など様々。いずれの方も共通していたのは障がい者分野に携わり、

高い問題意識をもっていたことです。

 

※プログラムに興味のある方は、以下のリンク先も併せて参照ください。

http://www8.cao.go.jp/youth/kouryu/data/core.html

 

 

【派遣】(事前準備とその感想)

事前の研修で、派遣中の個人テーマを設定しました。

私のテーマは、『英国での障がいの有無や障がい種の壁を越えた実践を学び、

心のバリアフリーを促進するための活動を開発する』。

これは、IFPの理念や日本が目指すインクルーシブ社会の実現に活かせるこ

とを学ぶ、という意味です。

 

派遣中は、行政機関やチャリティ団体など約10か所を訪れました。見たこと、

聞いたことはたくさんあるので書ききれませんが、ここでは私のテーマに近い

ものを抜粋してお伝えします。

 

※本報告は、私が日本と英国と比較して学んだことを中心に記載しています。

 

1)個人の意思を尊重することを重んじる。

障がい者の入居施設を訪問したところ、どの部屋も個性豊かな部屋になってい

ることに気付きました。カーテンの色、ベッドのシーツの柄、机や椅子など、

自分の好みに合わせて選んだ物が置かれていました。

このように、英国は小さなレベルから「個人の意思を尊重」しています。

個人の意思を尊重することに、障がいの有無は関係ありません。

 

2)物理的にバリアフル、だからこそ「心のバリアフリーが促進する」。

英国は物理的にはバリアフルな環境でした。具体的には道が石畳のためガタガ

タしている、エスカレーターの有無、点字ブロック不足などが散見されました。

こうした現状についてある人に聞いたところ、「困っている人を見かけたらす

ぐに他の人が手を貸す」そうです。それは障がい者でも高齢者でも妊婦でも同

様です。

この話を聞いて、私は物理的にバリアフルであっても心がバリアフリーであれ

ば、困難は乗り越えられる、と改めて気づきました。

 

3)自分のニーズを把握することが求められる。

英国は、個の「障がい」よりも個の「ニーズ」に焦点をあてています。例えば、

日本が障がい程度からサービスを検討するのに対し、英国はニーズからサービ

スを検討するそうです。

すなわち、自分のニーズがどこにあり、何なのかを把握しなければ、サービス

を個人の意思に沿って利用しにくくなります。

 

4)社会参加の機会を保障するための方法が多様にある。

社会に参加するには、障がいの有無に関わらず、日常生活に必要な情報や法律

への理解が大切です。しかしながら障がい故に、社会経験や情報理解の機会が

不足していると、健常者と同じように社会参加をスタートさせるのは難しいです。

Changeという団体を訪問したときです。ここは、イージーリード冊子の作成

や障がい者の人権啓発などに取り組んでいます。「イージーリード」とは、生

活に必要な情報をイラストや簡単な言葉によってわかりやすく伝えることです。

もちろん日本でも既に導入されていますが、英国はかなり前から【生活に必要

な情報】をテーマにしたイージーリード冊子の作成が広まっています。

このように多様な社会参加の機会を保障するための方法を用いれば、障がい故

に社会から離れてしまった存在になることを防げます。

※Changeに興味のある方は、以下のリンク先も併せて参照ください。

http://www.changepeople.org/

 

5)障がい当事者に自信をもつ機会を

あるリハビリ施設を視察したときの所長の言葉が心に残っています。

「支援をしすぎることは本人の挑戦する機会を奪ってしまう」

支援と見守りの境界は難しいですが、本人が挑戦する機会を増やす姿勢は確か

に必要です。もしかしたら挑戦によって失敗するかもしれません。

しかし、失敗体験があっても、それを乗り越えて成功体験に結びつけることが

できれば本人は自信をもちます。いかにして成功体験を蓄積させるかという観

点も忘れてはいけません。

 

 

【これから】

心のバリアフリーにむけた重要な視点を学べました。なかでも、ニーズの認知

の必需性に気づくことができたのは非常に大きな成果です。

日本で心のバリアフリーを促進するために

(Ⅰ)当事者、地域住民、非営利活動団体、ボランティアのニーズを認知する。

(Ⅱ)あらゆる人が参加できる機会を保障する。

(Ⅲ)多様性を理解することに取り組む余地がある。

が大切だと考えました。

 

2014年に日本は障害者権利条約を批准したものの、国民の認知度や関心度

は決して高くはありません。障がいへの関心が、関係者に限られていることは

大きな課題です。

多くの人を巻き込んでステークホルダーを拡大するためにも、みんなが当事者

意識をもち、相互に刺激し合えるような働きかけが求められます。

そのためには、まず私自身が率先して活動の中心となるよう行動し、障がい者

分野でどのように、またどうすれば貢献できるかを明らかにします。そして、

あらゆる人がカラフルな生活をおくれるよう働きかけます。

 

最後に、

支えてくださった皆様のおかげで、日本を客観的に捉え、学んだことをどう活

かすかという視点を得ることができ、少しでも学びを読者の方々に届けたいと

いう想いで本報告を書きました。

本派遣プログラムにご尽力いただいた内閣府、一般財団法人青少年国際交流セ

ンター、英国のコーディネーター、訪問先の方々、ホームステイ先のご家族、

通訳者の皆様…ありがとうございました。